2019年度バックナンバー
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2020.3.5
飛ぶ強磁場装置が実験を変える
そもそも、強磁場というのは、磁場自体を研究する特殊な分野ではなくて、磁場を用いて物質を研究する分野なので、裾野まで考えると、生物や宇宙といった分野も含みます。磁場というのは、電荷の動くことによって生じる場です。その逆に、磁場を加えると電荷の動きや電子のスピンに影響を与えるので、物理では、磁性、超伝導、半導体といった分野を中心に、いろんな分野で使われています。 -
2020.2.3
スピン流の伝搬機構を偏極中性子で視る
スピン構造物性グループでは、X線や中性子、ミュオンなどの量子ビームと呼ばれる測定手段を用いて、電子スピンが絡む固体物質中の量子現象を対象に研究を展開しています。量子ビームの中でも中性子散乱は非常に強力な微視的測定手段として知られています。今回は中性子散乱の中でも特に、中性子自身の持つスピン自由度を利用した偏極中性子散乱のスピントロニクスへの適用を紹介します。 -
2020.1.8
水・プロトン・水素結合の物理
低次元量子物理グループでは、水素結合した系に含まれる水とプロトンが織りなす新奇な現象を研究しています。数多くの生体物質、化学物質、機能性材料が水素結合を有しており、非常にバラエティーに富んでいます。我々の試料保管庫には、さまざまな物質が収められています。まさにギフトボックスです(図1)。そこには、各種ナノ多孔質結晶、超プロトン伝導体(M3H(XO4)2, M = K+, Rb+, Cs+; X = S, Se)などが入っています。さらに、通常廃棄される骨、皮、鱗、カニの甲羅などから抽出したコラーゲン(タンパク質)、キチン(多糖類)、そして、DNAもあります。我々は、こうした系の新たな機能性の創造を目指しています。 -
2019.11.22
梯子格子における新奇な強相関電子物性
巨視的量子物性研究室では、物質合成を基盤に据えた総合的研究を通して、磁性・超伝導・トポロジカル相などの強相関電子系の物理を研究しています。既存の枠組みでは記述できない新奇な巨視的量子物性を発見することを究極の目標に定めています。 -
2019.10.2
空間反転対称性の破れた金属で観測された「軌道交差」
物質、とりわけ金属の電子状態を解明するうえで、フェルミ面と呼ばれる性質を調べることは重要とされています。本グループではドハース・ファンアルフェン効果と呼ばれる磁化の量子振動現象を用いて、強相関伝導系のフェルミ面の性質を調べています。最近我々は、このドハース・ファンアルフェン効果で、空間反転対称性の破れた金属のフェルミ面間で生じる「軌道交差」という現象を見出しました。