物性実験II
生命非平衡物理
教員
- 教授/鳥谷部 祥一
- 准教授/佐久間 由香
- 助教/中山 洋平
- 特任助教/西澤 賢治
研究について
生命系などの非平衡かつ柔らかい系の性質を、物理の言葉で記述し理解することを目指しています。特に、非平衡熱力学、情報熱力学、ソフトマター物理学などの理論をよりどころに、生体分子、細胞膜、細胞運動などの生命系から、微小粒子を用いた物理系まで、幅広い系を対象に実験研究を進めています。
現在は以下のようなトピックについて研究を進めています。
- ゆらぐ系での非平衡熱力学と情報熱力学
- アクティブマターの物理
- 生命の起源 / 遺伝子工学(情報複製の物理、遺伝情報の起源、膜複製など)
- 細胞膜の物性と生命機能
細胞内では、「生体分子機械」と呼ばれるナノマシンが自律的に運動して重要な役割を担っています。その運動の背後にある物理を、非平衡、ゆらぎ、情報といったキーワードを軸に、1分子実験技術を駆使して研究しています。特に、生命現象の理解には「情報」の概念が重要と考え、「情報熱力学」の基本概念の実証から、その生命系への応用まで、幅広く研究を展開しています。さらに、これらの知識を統合し、自律的に運動する人工分子機械の創出にも挑戦しています。
バクテリアは、外界の情報を処理して遊泳を制御し、栄養源などへ向かって進む「走性」を示すなど、高度な自律制御を実現しています。私たちは、このミクロな自律系の振る舞いを、物理の言葉で記述し理解することを目指しています。特に、集団で遊泳する際に現れる多様で豊かな現象を「アクティブマター」の物理として探求しています。
無生物系から生命系へと転移するいわゆる「生命の起源」は、物理の問題としても豊かな内容を含んでいます。特に、遺伝情報や自己複製する膜の起源は、非平衡熱力学やソフトマター物理の重要な対象です。これらを、モデル実験系等を通して実験物理として探求しています。また、その知識を応用することで、バイオ工学技術の発展を目指しています。
細胞膜は生命機能発現の場としての役割を担っており、特に膜弾性や膜流動性などの力学的特性は、生命機能を支える重要な物理量です。私たちは、非平衡状態にある生細胞膜と平衡状態にある非生細胞膜の力学的特性を比較することで「生きていることに特徴的な物理量」を抽出し、物理の観点から生命の理解を目指しています。さらにその知見を正常細胞と病変細胞の膜の物理量の差に展開し、医学への応用の可能性についても探っています。
これらの研究は、国内外の多様な分野の研究グループとの共同で進めており、グローバルな研究環境で生命と物理をつなげる物理法則の解明を目指しています。