佐藤宇史教授、菅原克明准教授らのグループの研究成果が東北大学からプレスリリースされました。
:2021.10.08
熱や光などの刺激に強い原子層モット絶縁体の発見
室温で動作するモット電子デバイスの実現に道
発表のポイント
- 原子数個の厚さしか持たないTaSe2とNbSe2の原子層薄膜を作製し、その電子状態の観測に成功
- 原子層TaSe2とNbSe2が熱・電子注入・光に対して強いモット絶縁体であることを発見
- 原子層物質における高温超伝導などの物性開拓やモット絶縁体を活用した室温で動作する電子デバイスの実現に道
概要
「モット絶縁体」は、普通の絶縁体とは異なり、電子同士が避け合うことで絶縁化し、その近傍で超伝導などの多彩な物性が現れることから、古くから盛んに研究されてきました。その一方で、厚さを極限まで薄くして2次元にしたときに室温でモット絶縁体となる原子層物質は発見されておらず、その性質も未解明でした。東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の佐藤宇史教授、大学院理学研究科の菅原克明准教授、AIMRの岡博文助教、福村知昭教授、台湾の国家同歩輻射研究中心(NSRRC)および中国清華大学の国際共同研究グループは、分子線エピタキシー法注3を用いて2セレン化タンタル(TaSe2)および2セレン化ニオブ(NbSe2)原子層薄膜を作製し、その電子構造をマイクロARPES(角度分解光電子分光)やSTM(走査トンネル顕微鏡)などによって調べました。その結果、モット絶縁体状態が様々な外的刺激(熱・光照射・キャリア注入)を受けても極めて強固に保たれていることを明らかにしました。今回の成果は、グラフェンを超える新たな原子層薄膜の物質開拓やそのデバイス化に大きく貢献するものです
本研究成果は、ネイチャー系英国科学誌Nature Communicationsの2021年10月7日号で公開されました。
図1: (a) MX2の結晶構造の例。(b) 単層TaSe2やNbSe2で形成される「ダビデの星」の模式図。12個のTa/Nb原子が、あたかもダビデの星のように、特定のTa/Nb原子を中心に歪んで整列します。
論文情報
雑誌名:「Nature Communications」
論文タイトル:Robust charge-density wave strengthened by electron correlations in monolayer 1T-TaSe2 and 1T-NbSe2
著者: Yuki Nakata, Katsuaki Sugawara, Ashish Chainani, Hirofumi Oka, Changhua Bao, Shaohua Zhou, Pei-Yu Chuang, Cheng-Maw Cheng, Tappei Kawakami, Yasuaki Saruta, Tomoteru Fukumura, Shuyun Zhou, Takashi Takahashi, and Takafumi Sato
DOI番号:10.1038/s41467-021-26105-1