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アクシオンと宇宙論:共鳴現象による位相欠陥生成

素粒子・宇宙理論グループ

 標準理論は多くのパラメターを含むが、個々のパラメターがなぜその値であるのかという疑問にはまだ確固たる答えがない。特に、パラメターが「自然に」期待される値から大きく外れた値を持つ場合には、その背後に新しい物理が隠れているかもしれない。例えば、中性子電気双極子モーメントの実験結果から強い相互作用におけるCP位相が非常に小さい(100億分の1以下)ことがわかっている。この非常に小さいCP位相を説明するために導入されたのがQCDアクシオンである。初期宇宙においてQCDアクシオンは質量を持たないが、QCD相転移の際にインスタントン効果によって質量を獲得し、CP位相を打ち消すようにポテンシャル極小値に落ち着く。超弦理論の4次元有効理論においてもアクシオン場が多く現れ、それらは一般に混合しうる。最近の研究において、複数のアクシオン場同士の混合によって共鳴現象が生じ、アクシオンが勢い良くポテンシャルの谷を走り抜けるという新しい現象が見つかった(1)。この新しい現象によって、初期宇宙において壁状の位相欠陥が容易に作られることが分かり、その消滅時に生成される重力波や物質・反物質非対称性、密度揺らぎの非ガウス性について研究が進行中である。
(1)R. Daido, N. Kitajima, F. Takahashi, arXiv:1505.07670 [hep-ph].

axion-roulette   potential-axion
2つの混合するアクシオン場の共鳴現象に伴い、軽いアクシオン場がポテンシャルの谷を走り抜ける「アクシオン・ルーレット」が生じたときの運動の様子。   アクシオン・ポテンシャル。星がポテンシャル極小値を表す。

 

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