専攻長から

Iwai

理学研究科物理学専攻長・理学部物理学科長(2019年度)          
中村 哲            

 この宇宙には様々な現象、物質が存在しますが、それら全てをそのままの形で人間が理解することはできません。物理学とは、森羅万象を人間が理解出来る形にモデル化し、そのモデルを元に新しい現象を予測する学問です。自然界で起きている様々な出来事の中から、その背後に潜む基本的な法則や原理を発見するための「実験」、それらの法則や原理に基づいて、新しい現象を説明・予測する「理論」を両輪として、これまでに物理学はビッグバンに始まる宇宙の進化と構造や、世界を構成している基本要素である素粒子・原子核、そして物質の構造など様々な自然現象に関する多くの謎を解き明かしてきました。

 その過程では、クォーク、レプトン、ゲージボゾンやヒッグス粒子などの物質・宇宙の成り立ちに関わる素粒子の発見とともに、X線、核磁気共鳴(NMR)、レーザー、高温超伝導、カーボンナノチューブなど近代的な生活では欠かせない様々な技術の礎が築かれました。これらのイノベーションは、実験事実に基づく基本法則と論理的思考から導かれた結果によるものです。物理学は20世紀初頭に、ニュートン力学、古典電磁気学を基本とするものから、相対性理論、量子力学といったまったく新しい時空・物質の理解の仕方へとパラダイムシフトし、その後の100年間で、素粒子・原子核といったフェムトメートル(1/1,000,000,000,000,000 m)の極微の世界の理解を進める一方、エレクトロニクス、ナノテクノロジー、フォトニクスなどの我々の周りで直接的に役立つ可能性を秘めた数多くの新展開を生み出してきました。そして近年では、コンピューター内に作った仮想空間で本来制御不可能な物理法則を自由に変更することで、我々が存在する自然界を理解しようとする計算機物理も飛躍的発展を遂げています。深刻な環境問題やエネルギー問題を抱えている現代において、次の100年間にこれらを解決していくために、確立した実験事実と論理的思考を基本とする物理学のアプローチはますます重要になっていくと期待されています。

 物理学の目標は、素粒子、原子核、原子、分子、物質、星、宇宙という世の中の階層的構造、そして宇宙の始まりから現在の我々がどのように形作られてきたのか、そして今後どうなるのか、多様な自然現象をなるべく少ない基本原理から統一的・系統的に理解することです。そのためには、専門性の枠にとらわれることなく、自由闊達に考えをぶつけ合う環境が必要不可欠です。東北大学 物理学教室・物理学専攻は、協力/連携講座を含め約160名の研究の第一線で活躍する教員を擁し、素粒子・宇宙理論、原子核理論、物性理論、素粒子実験、原子核実験、物性実験、生物物理等の幅広い研究分野をカバーする国内外でも最大級の物理学研究組織になっています。物理学のさらなる発展のためには新たな発想を持った次世代の研究者を生み出していくことが重要です。最先端の研究組織の一員となることが若手研究者育成にとって極めて重要であると私たちは考えています。

好奇心と想像力を持ち、新たな物理学を切り開こうという強い意欲を持った学生の皆さんと一緒に研究できることを楽しみにしています。

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