物理学科の概要

物理学とは

 物理学は、自然界で起きている多様な出来事の系統的理解を目指す学問です。物理学は、これまでに物質の基本要素である素粒子・原子核をはじめとし、それらが複雑に相互作用すること生じる極めて多様で多彩な物質の性質、さらにはビッグバン以来の宇宙の構造に至る豊かな自然の神秘を明らかにしてきました。現代物理学では、超低温・超高圧・超強磁場などの極限環境を積極的に利用して物質の諸相の解明が進められており、さらに複雑系・生命現象の物理学などへ、その研究対象を広げつつあります。物理学の発展は天動説から地動説への転換のように我々の世界観に大きな影響を与えてきました。また、一方で、物理学の成果は技術、文明の発達の基盤となり、我々の生活のいたるところに利用されています。物理学は物心両面で人々の生活に深く関わる学問です。

  • 学生と教員の議論の様子写真

    セミナーの風景(素粒子・宇宙理論研究室):物理学科では、最もミクロな構造である素粒子から最もマクロな構造である宇宙に至るまで多岐にわたる階層を対象に研究を進めています。こうした物理学の最新の成果を学ぶためには、現代物理学の深い理解が欠かせません。

  • ニュートリノ観測の写真

    神岡液体シンチレータ反ニュートリノ検出器(カムランド)を活用したキセノン136核の2重ベータ崩壊の観測や原子炉ニュートリノ振動の測定による素粒子研究のほか、ニュートリノ観測による地球、太陽、天文学の研究を推進しています。東北大学の学生には世界をリードするこれらのユニークな研究にも参加する機会があります。

東北大学理学部物理学科

 物理学科は1911年の設置以来多くの研究者を輩出してきました。現在では教員およそ160人を擁する国内外でも最大級の物理学教育研究組織になっています。学部では物理学の基本となる考え方を修得します。そして4年次では各研究室に配属され、より専門的なテーマを研究します。大学院では大学院生が主体となって第一線の研究を行います。東北大学の物理学分野の研究水準は世界的に見ても極めて高く、研究論文の重要性に関する国際機関による評価では、世界で12位、国内で2位に位置づけられています(2013年トムソン・ロイター社)。このような優れた研究教育環境の中で、毎年多数の大学院生が将来の物理学研究を担う人材として育っています。

  • ガンマ線測定装置を調整する院生と教員の写真

    我々は、陽子・中性子以外にラムダ粒子など第3の粒子を含んだ「ハイパー原子核」や、中性子と陽子の数の比が極端に偏った「不安定原子核」の研究で世界のトップレベルにあります。写真は、こうした新タイプの原子核を調べるため、ガンマ線測定装置を調整する院生と教員。

  • 物性理論の計算資料や議論の様子の写真

    物性理論では紙と鉛筆を使った解析計算、クラスター型コンピュータ(左上図)を使った大規模数値計算や、学生と先生との活発な議論(下図)を通して、天文学的な数の電子や原子核が集まった時に初めて発現する現象を明らかにします。その対象は、相互作用の強い系の超伝導や磁性、電子や構造体のトポロジカルな性質、物質の非平衡状態(右上図)、生体物質など多岐にわたります。

 物理学科には現代物理学の重要な分野を網羅する数多くの研究室があります。素粒子・宇宙論・原子核分野では、宇宙の起源や、ニュートリノ質量と超対称性の関連、またハイパー原子核や不安定原子核の構造と反応などの研究が活発に行われています。物性分野では電子や原子核などが互いに相互作用することで現れる超伝導など、個々の粒子の性質からは想像出来ない多彩な相転移や臨界現象などが幅広く研究されています。また、マイクロ波からX線領域に及ぶ電磁波や中性子などを用いた実験的研究や、量子効果がはっきりと現れるナノマテリアル、極低温領域の実験も行われています。さらに、フェムト秒レーザーシステム、ナノ物質や有機物質・高分子系の研究、生体物質の機能性研究なども意欲的に進められています。

  • 超高分解能光電子分光装置の写真

    「超高分解能光電子分光装置」物質に紫外線を照射し、外部光電効果により真空中に放出された光電子のエネルギーや運動量を測定することで、物質の性質を調べることができます。

  • フェムト秒レーザーシステムの写真

    「フェムト秒レーザーシステム」フェムト秒(10-15秒)は、物質内における分子や原子の振動の 「一揺れ」の時間に相当します。このようなパルス幅の短いレーザー光を用いることに よって、光と物質の相互作用の”瞬間”を超高速スナップショットとして捉えることができます。

キャンパスライフ

カリキュラム

 4年間の学部教育のうち、最初の1年半は物理系(物理学科、宇宙地球物理学科)として教育が行われ、これらの学問に共通する基礎となる古典力学、電磁気学、熱力学を学びます。2年次の後半より学科に分かれますが、物理学科では、現代物理学の基本である量子力学や統計力学などを身につけると同時に、実験により物理の実際に触れることができます。引き続いてより専門的な素粒子、原子核、物性物理学が講義されます。4年生は物理学教室の研究グループのいずれかに所属して卒業研究を行います。学部教育は、大学院における高度な教育の基礎を与えるとともに、産業界で活躍するための科学的素養を培うこともめざしています。

平成27年度版カリキュラム

  • 演習の様子写真
  • 授業の様子写真

卒業後の進路

 卒業生のほとんどは大学院に進学し、4年卒業時での就職者は全体の1割程度です。大学院で修士の学位を取得した者の約1/3は更に研究を続け、博士の学位を得ています。修士修了生の就職先は、物理学の基礎的知識と思考力を身につけていることが評価され、産業界の基幹をなす大企業の研究所から大学、国公立研究機関、官公庁、教員などの多方面におよんでいます。特に、企業への就職は、電気・電子・情報系・鉄鋼・金属・素材系、重機械・精密機械系、化学工業関連、商社、銀行、生保、報道関係など、多岐にわたっています。博士課程修了生は国内外の多くの大学、国公立研究機関あるいは大企業の研究所などで、活躍しています。

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