若林裕助教授らの研究成果が東北大学からプレスリリースされました。

 

基板に吸着するだけで、100兆個以上の分子の「形状」が一斉に変化 −世界初、有機半導体の電子状態を物理吸着で制御することに成功-

発表のポイント

  • 近年、有機半導体を基板上に印刷することで、超薄膜を製造することが可能になりました。この超薄膜中では、1cm2あたりに100兆個以上の分子が自ら集合することで、高品質の単結晶が形成されます。
  • 今回、有機半導体単結晶の基板界面の分子の形状を0.1ナノメートルの精度で決定することに成功し、基板に物理吸着するだけで100兆個以上におよぶ全ての分子の形状が同じように変化することを明らかにしました。
  • 超薄膜の厚さを制御することで、物理吸着による分子形状の変化が抑制され、電子の動き易さが40%以上向上することも明らかとなりました。

東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、東北大学大学院理学研究科、大阪大学大学院基礎工学研究科、筑波大学大学院数理物質科学研究科、広島大学大学院理学研究科、スタンフォード大学SLAC国立加速器研究所、産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは、有機半導体単結晶超薄膜が基板に吸着する際の分子形状を0.1ナノメートル(100億分の1メートル)の精度で決定することに成功しました。その結果、比較的剛直な構造を持つ有機半導体であるにもかかわらず、基板に物理吸着することで、100兆個以上におよぶ全ての分子が同じように形状を変えることを明らかにしました。この物理吸着に伴う分子形状の変化は、超薄膜の厚さを制御することで抑制され、半導体デバイスの性能指標である移動度が40%以上向上することも明らかにしました。

本研究成果は、英国科学雑誌「Communications Physics」2020年1月23日版に掲載されました。本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」(研究代表者:竹谷 純一)の一環として、一部の実験は高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所フォトンファクトリーBL-3A、SLAC SSRL BL8-2ビームラインを利用して行われました。

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図1 印刷プロセスを用いた有機半導体単結晶薄膜の製造手法。基板の上に保持された半導体インクの表面では、多数の分子が自ら集合し、薄膜を形成する。インク表面で得られた薄膜は、インクの乾燥に伴い基板上に物理吸着する。

論文情報
雑誌名:「Communications Physics」(オンライン版:1月23日)
論文タイトル:Sub-molecular structural relaxation at a physisorbed interface with monolayer organic single-crystal semiconductors
著者:Akifumi Yamamura, Hiromasa Fujii, Hirohito Ogasawara, Dennis Nordlund, Osamu Takahashi, Yutaro Kishi, Hiroyuki Ishii, Nobuhiko Kobayashi, Naoyuki Niitsu, Balthasar Blülle, Toshihiro Okamoto, Yusuke Wakabayashi*, Shun Watanabe*, and Jun Takeya*
DOI番号:10.1038/s42005-020-0285-7

リンク
プレスリリース (東北大学Webサイト)

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