素・核理論

素粒子・宇宙理論

教員

教授/高橋 史宜 教授/山口 昌弘
准教授/石川 洋 准教授/隅野 行成 准教授/中山 和則 准教授/米倉 和也
助教/北嶋 直弥 助教/堀田 昌寛 助教/山田 將樹 助教/山田 洋一 助教/殷 文

研究について

素粒子物理は物質の究極の姿を対象とする分野であり、物質の最も基本的な構成要素である素粒子と、自然現象を支配する最も基本的な物理法則としての素粒子間の相互作用を研究するのが目的である。

素粒子物理の基礎となっているのは量子力学と相対論である。素粒子物理の対象は物質のミクロな構造であるが、短い距離を探ることは不確定性関係ゆえ高いエネルギー領域に対応する。素粒子物理が高エネルギー物理ともよばれるゆえんである。素粒子の物理法則を記述するのには相対論的な量子場の理論が用いられ、その中でもゲージ理論と呼ばれる理論は特に重要である。現在知られている基本的相互作用である電磁相互作用、強い相互作用、弱い相互作用、重力相互作用の4つのうち、重力以外の3つはゲージ理論で記述される。さらに、ゲージ理論が弱い相互作用を正しく記述するためにはゲージ対称性の自発的破れという現象が起こっていなければならないが、これを引き起こすヒッグス粒子は2012年に発見された。この3つの力と物質粒子を記述する理論は素粒子の標準模型と呼ばれる。この理論の構築は20世紀後半の物理学における最も重要な達成の一つであると言っても過言ではない。

標準模型は、豊かで美しい構造を持った理論である。これまでに標準模型が持つ様々な性質の実験的な検証が行われ、標準模型は高い精度で現在のほとんどの実験データを説明することが確かめられている。しかしこの理論には未解決の大きな謎が幾つか残されている。それらの謎は、今後素粒子物理法則を深く追究する際に重要な道標となる筈である。例えば電弱スケールの安定性はヒッグス粒子の存在と密接に関係する謎である。

標準模型を超えた新たな素粒子現象を探索するため新しい加速器の建設や既存の加速器の改良が行われており、高エネルギー最前線、精密測定の両方向での実験が計画されている。素粒子理論の発展のためには、高精度で物理現象を解析すること、及びそれらを記述する場の量子論を深く掘り下げて理解することが不可欠である。中でも強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)を理解することが、標準模型の精密検証において現在重要となっている。QCDは強結合の理論ゆえに難解である。クォークが単独で存在できないというカラーの閉じ込め現象など純理論的にも興味深い性質を持つ。 QCDの持つ漸近自由性という性質のため、高エネルギー側では陽子や中性子などの核子ではなく、素粒子であるクォークやグルーオンが主役である。このようにQCDをはじめとする場の量子論をより深く理解することが今後の素粒子物理の発展のための重要課題である。

一方、素粒子は最もマクロな構造である宇宙とも深く関わっている。宇宙初期の高温の時期には、素粒子が宇宙論の主役を演ずるためである。宇宙進化に重要な役割を果たすのは、加速器実験では未踏の超高エネルギー領域の物理である。宇宙の誕生直後には、真空の大きなエネルギーによってインフレーションと呼ばれる急激な膨張が起こったと考えられている。この宇宙の急激な膨張の後に、真空のエネルギーが輻射として解放され、熱いビッグバン宇宙がはじまり、膨張による冷却といくつかの相転移を経て、今日の宇宙へと進化してきた。宇宙初期を研究するには素粒子理論の知識が必要不可欠であり、また、逆に初期宇宙の研究から、素粒子物理学に対して新たな知見が得られると期待される。こうした観点から素粒子物理学に立脚した初期宇宙の研究が、最近の宇宙背景放射、重力レンズ、原初元素組成など宇宙観測の発展にも刺激されて活発に進められている。とりわけ、現在の宇宙の組成の大部分は暗黒エネルギー、暗黒物質によって占められていることが明らかになっているが、これらは素粒子の標準模型の枠内では説明でき
ず、新たな素粒子物理学を必要としていることは興味深いことであり、宇宙の組成を説明することはそこに住む我々にとって重要な課題である。

ところで、標準模型に含まれていない重力はもっとも古くから知られた相互作用であり、一般相対論という美しい理論が存在する。しかし、これは古典論であり、量子力学的な重力の理論は未完成である。量子重力を含んだ全てを統一する有力な候補として超弦理論がある。超弦理論は重力子の存在を必然的に予言する。また、過去には異なると思われていた複数の超弦理論が、ただ一つの理論の別々の側面を見ているだけであることが双対性の発見によって明らかになった。このことから超弦理論は過去のどんな物理理論とも違い一切変更の余地のない理論であり、そのため基礎物理学の最終理論として期待されている。

統一理論としてのみならず、超弦理論は極めて豊富な数理的構造を持っており、場の量子論や数学、物理の他分野などと影響を与え合い発展をしている。概念的にも、例えばAdS時空での量子重力理論と、重力を含まない場の量子論の間にAdS/CFT対応と呼ばれる双対性があるなどの驚くべき発見をもたらしている。そのように、超弦理論が場の量子論の数理的発展をもたらし、また場の量子論の発展もいまだ未完成である超弦理論の様々な側面の理解を深めるのに欠かせない。あまりに豊富な構造を持つゆえまだその全貌がはっきりと分からず、理解を積み上げることが重要である。

当研究室では、これら素粒子理論および素粒子的宇宙論の研究を広範囲にわたって行っている。以下に主なものをあげてみよう。


(1) 高エネルギー現象の理論の研究
稼働中および計画中の高エネルギー最前線のコライダー実験における素粒子現象の理論的研究や、様々な精密測定における新現象の出現についての理論的研究を行っている。

(2) 初期宇宙の研究
素粒子理論に立脚した整合的宇宙論の構築とその観測的検証を主眼として、インフレーション模型、バリオン数生成、暗黒物質模型、密度揺らぎの進化に関して研究を進めている。

(3) 超弦理論や場の量子論の研究
超弦理論や場の量子論が持つ数理的な構造を解明するための研究を進めている。

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