素・核実験

素粒子実験(加速器)

教員

教授/市川 温子
准教授/佐貫 智行
助教/中村 輝石 助教/Lukas Berns

研究について

 我々はまだ、素粒子のさまざまな性質の起源や宇宙の物質の起源などを理解していない。これらの謎を解明するために、当研究室では加速器を用いて、重いクォークやヒッグス粒子の性質を調べる、あるいはニュートリノを生成し300キロメートル走行後の性質の変化を測定している。また、新しい検出器を作りニュートリノの特異な性質を捉えることも目指している。

加速器長基線ニュートリノ振動実験

T2K実験

 我々の宇宙には物質のみが満ちていて、反物質は見当たらない。これは、現代の科学では説明できない謎である。これに対し,素粒子標準理論に「重いニュートリノ」という新たなピースを導入することで、ニュートリノの極端に軽い質量、そして宇宙における物質と反物質の非対称の生成などのパズルを解くことができるという有力な説がある。この仮説を検証するには、「ニュートリノにおける粒子・反粒子対称性(CP 対称性)の破れ」を見つけること、そしてニュートリノが自身を反粒子とする「マヨラナ粒子」であるかどうかを突き止めることが重要である。
 当研究グループでは、図に示す国際共同実験T2K(ティーツーケー) およびハイパーカミオカンデ計画を推し進め、「ニュートリノにおける粒子・反粒子対称性(CP 対称性)の破れ」の探索を進めている。茨城県東海村にあるJ-PARC加速器で生成したニュートリノあるいは反ニュートリノを295 km離れた岐阜県飛騨市神岡にあるスーパーカミオカンデ検出器で測定するT2K実験では、2020 年までの測定でCP 対称性が破れている可能性が95%程度という結果を得ている。CP 対称性が破れているかどうか結論付けるためには、もっとデータ量を増やし、また測定の精度を上げる必要がある。そのためニュートリノビームの強度を上げるために必要な装置の開発、測定精度を上げるためのニュートリノ検出器の製作、新しいデータ解析手法の開発を行いつつ、データ取得を進めている。スーパーカミオカンデは5 万トンの水を用いてニュートリノを検出器しているが,ハイパーカミオカンデ計画では、26 万トンの水を有する検出器を新たに作り約8倍の効率でニュートリノを捉える。今後、T2K実験、そして2027 年開始予定のハイパーカミオカンデ実験によりニュートリノはCP 対称性の破っているのか、破れているとしたらその大きさを決定することを目指す。

ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索

 上記の「重いニュートリノ」のシナリオを成り立たせるには、ニュートリノが自身を反粒子とする「マヨラナ粒子」でなければならない。そこで、「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」という特殊なベータ崩壊の探索が世界中で進められている。ベータ崩壊が2回同時に起きる二重ベータ崩壊では通常、反ニュートリノが2個放出されるが、ニュートリノがマヨラナ粒子の場合には、ごく稀にこの二つの反ニュートリノが対消滅して「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」を起きる可能性がある。我々の進めていAXEL(アクセル)実験も「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」を探索しようとしている。AXEL検出器では二重ベータ崩壊核であるキセノン136 を高圧なガス状態で検出器媒体としても用いる。我々の開発した新しい原理により、高い分解能でエネルギーを測定し、また二つのベータ線が放出される様子も捉えることのできる高性能検出器である。

国際リニアコライダー(ILC)

国際リニアコライダー

 国際リニアコライダー(ILC)は次世代の大型加速器として世界的に推進されている計画で、電子と陽電子を全長約20kmの線形加速器でそれぞれ陽子の重さの125 倍のエネルギーになるまで加速し正面衝突させ、ビッグバン直後の状態を再現する。岩手県と宮城県に広がる北上山地がILC の建設候補地として上がっている。ILCの主な目的は素粒子の質量を生み出しているヒッグス粒子を生成し研究すること、そして暗 黒物質の正体となる粒子などの標準理論を超える物理現象を探索することである。ジュネーブ郊外にあるCERN研究所に設置されたLHC加速器で、2012年暮れにヒッグス粒子と見られる粒子が発見されたが、これは素粒子物理学の新時代の幕開けとなるものである。LHCは今後高度化してヒッグス粒子を調べて行くことになるが、ILCはLHCに比べてその高度化のあとでも、平均的に数十倍の統計的パワーがある。2013年2月にはリニアコライダー計画を国際的に推進する組織 (Linear Collider Collaboration – LCC) が発足した。当研究室ではILC 推進の拠点の一つとして活発な活動を続けている。ヒッグス粒子の性質がどのくらいの精度で測定できるのか、標準理論を超える理論がもしあるとすればそれはどのくらいの感度で発見できるのかなどを研究する一方で、詳細なコンピュータ・シミュレーションによって測定器設計の最適化を行っている。また、検出器の研究開発を進めている。

Belle II 実験
茨城県つくば市にある高エネルギー研究所のB ファクトリーSuperKEKB では、電子と陽電子を加速し正面衝突させてb クォークを含むB 中間子、反b クォークを含む反B 中間子を生成している。これを用いてさまざまな測定をする実験がBelle II(ベルツー)実験である。2010 年まで行われていた前身のBelle 実験に比べて50 倍のデータを貯めることで素粒子標準理論では説明のつかない新しい現象を探す。当研究室も寄与することでBelle II 実験は2019 年に本格的なデータ取得を開始し、今、測定結果を出しつつある。

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