物性実験II

スピン量子物性

教員

教授/佐藤 卓
助教/奥山 大輔 助教/那波 和宏 助教/Johannes Reim

研究について

電子の持つスピン 1/2 は大変魅力的な研究対象です。多くの物質では低温で電子スピンは静止しますが、中には幾何学的フラストレーションや低次元性の効果、さらには他の自由度との結合等により特異な揺らぎを伴う基底状態を示す場合があります。我々は中性子非弾性散乱というスピンの運動を直接観測できる強力な手段を用いて、このような揺らぎに支配された量子的な基底状態の形成原因やそこから現れる特異な物性を解明する事を目的に研究を進めています。
中性子散乱では固体物理研究に適したエネルギー領域(大凡 0.01 – 1000meV) に関して、スピン揺動の空間的な情報を含む運動の詳細を観測する事ができます。特に、近年稼働を始めた J-PARCパルス中性子分光器では、広い運動量・エネルギー空間の散乱関数を一度に測定する事が出来るため、スピン揺動の全体像の把握に大きな威力を発揮するものと期待されます。

本研究室では、スピンダイナミクス測定に対する唯一無二の手段である中性子非弾性散乱を駆使して以下のような研究を行っています。

  • 遍歴電子系における反強磁性と超伝導の研究
  • 低次元フラストレート量子スピン系における巨視的量子現象の研究
  • 非周期スピン系における磁気秩序とダイナミクスの研究
  • 中性子非弾性散乱分光器の開発・中性子非弾性散乱スペクトル解析法の開発

Rb2Cu3SnF12 単結晶を用いて測定した
中性子非弾性散乱スペクトル。
強い分散を持つシングレット-トリプレット励起が
観測された。

本研究室の特色は、中性子散乱を用いた物質科学研究を行うだけでなく、中性子散乱法やその解析法の開発も行う事にあります。世界中の中性子散乱施設を用いて研究を推進すると同時に、国内の中性子散乱分光器の装置グループ員としてそれらの開発を進めるという、極めてやり甲斐の有る研究スタイルです。

最近の研究例として、歪んだ s=1/2 籠目格子 反強磁性体 Rb2Cu3SnF12 の磁気励起測定例を 図に示します。この系は低温で非磁性の基底状態を持ちますが、非磁性基底状態波動関数の空間的な詳細は不明でした。我々は非磁性基底状態から磁性励起状態への遷移の波数依存性を詳細に調べる事で、非磁性基底状態がシングレットの風車型配列からなる Valence-Bond-Solid 状態である事を明らかにしました。この状態は極めて興味深い状態であり、歪みの無い理想系で予想される Resonating-Valence-Bond 状態の解明に大きなヒントを与えるものと期待されます。

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