物性実験I

低温物質科学

教員

准教授/野島 勉
助教/中村 慎太郎

研究について

本グループでは、低温において顕著にその特性が現れる超伝導体や強い相関を持った電子系における電子物性の研究を行っています。これらの物質が低温で示す物理現象を解明するだけではなく、通常では存在し得ないような試料や電子状態を作り出すとともに、これを制御しながら新しい物理現象を見出すことを最終的な目標としています。この目標を達成するため、薄膜、多層膜、単結晶およびそれらをデバイス化した試料を用い、低温(数10 mK – 300 K)・磁場中(0 – 14 T)での輸送特性や熱力学特性を調べています。

 最近では、電場誘起超伝導、薄膜超伝導、磁場中新規超伝導をキーワードとした研究を主に進めています。

電気二重層トランジスタ(EDLT) 構造の概念図。

EDLT 構造を用いたYBa2Cu3Oy 薄膜の
超伝導状態から絶縁体状態への連続制御。

約300 mKまでの精密直流磁化の測定が可能な研究室自作の3He冷凍機付き磁化測定システム。

· 進行中の研究テーマ

(1) 電場を用いた超伝導制御と新超伝導探索
電気二重層トランジスタ構造により発生させた超強電場を用いて、超伝導体薄膜や絶縁体結晶表面に、通常の方法では実現できない数の伝導キャリアを電場誘起し、そこで創生される特殊条件下での超伝導を調べています。特に、電場に起因した空間反転対称性の破れが生み出す新しい超伝導機構や超伝導現象、強電場により実現可能な超伝導体キャリアの電子・ホール対称性に関わる物理現象に注目しています。

(2) 薄膜を用いた2 次元超伝導物性
超伝導体を数nmから数十nmの薄膜にすると、次元性の低下により新たな特性が現れること、もしくは通常のバルク(3 次元的な固体)で観測されにくかった現象がより鮮明になることがあります。様々な超伝導体の薄膜試料を用いて、超伝導転移温度・転移磁場の上昇や新規超伝導現象の創出を目指した研究を行っています。

(3) 高温超伝導体の渦糸物理学
銅酸化物、鉄ニクタイド・鉄カルコゲナイドといった高温超伝導体では、大きな熱ゆらぎ効果やマルチバンド(複数の超伝導ギャップ)の効果により、従来型の超伝導体には顕著にされなかった渦糸状態(磁場中での量子磁束状態)が観測されます。磁気トルクや磁化、磁気抵抗という測定手段で、その特性解明を行っています。

· 役に立つ実験装置開発
極低温下で物性測定を可能にする実験装置の開発も行っています。装置開発の経験は実験技術の取得や向上だけでなく、物理現象を広く理解する上でも大いに役立ちます。

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