物性実験I

低次元量子物理

教員

准教授/松井 広志

研究について

 1次元ナノチャンネル、2次元平面に挟まれたナノ空間、そして、かご状のナノ空間内におかれた水分子、プロトン、電子、或いは生体分子の動的な伝導・誘電特性(ダイナミックス)を研究しています。ナノ空間の形状や大きさに依存して、水素結合を媒介した水分子のつながりは大きく異なり、特異な物性が現れます。特に、ナノ空間に閉ざされた水分子は、生化学、医療、鉱物・地質学、さらには、環境・エネルギー問題などとも密接に関連する学際的な研究テーマです。現在力を注いでいる課題として、以下の項目があります。

  • (1) ナノ空孔中にある水分子ネットワークのプロトン伝導、およびナノ空孔に内包させた生体分子などの超広帯域伝導・誘電特性の研究。
  • (2) 水素結合が重要な働きをする有機分子錯体におけるプロトンー電子連動現象。
  • (3) シリケート化合物中におけるプロトン量子トンネル効果の研究。
  • (4) プロトンドープしたH-DNA、およびコラーゲンの生体燃料電池材料に向けた基礎研究。

 上記事柄を研究するに当たり、プロトン伝導率、誘電率の周波数分散と温度変化、分子振動、および特異な電子励起を測定しています。当グループでは、直流~ラジオ波~マイクロ波~テラ波~赤外にわたる14桁の広帯域な電磁波を用いています。これほど広帯域な実験が行えるグループは、世界的にも稀です!これらの電磁波は、低エネルギー電子励起、およびプロトン、水分子、生体分子などのダイナミックスを捉える最も強力な実験手段であり、独創的な研究を進めています。なかでも、時間領域分光法によるテラヘルツ波分光装置(0.1-3THz)では、最近プロトンの量子トンネル現象を捉えました。

 我々がもつ高周波技術を最大限に活用するため、多くの大学と共同研究を推進しています。閉ざされた水分子をもつ分子性ナノ多孔質結晶試料は、少ないエネルギーで作れ、かつ、環境にも優しい物質です。こうした利点を活かし、エレクトロニクスに換わるプロトニクスの発展を目指しています。また、ナノ空間を利用したガス吸蔵に向けた基礎研究を展開しています。糖、タンパク質の単結晶試料を作製することは、一般に困難ですが、そうした物質を、ナノ空間に閉じ込め、規則的に整列させた試料の研究も行っています。今後、積極的にナノ空間を利用した研究を展開し、応用も探ります。私たちの研究室は、伝統的な物性物理学研究の枠を超え、学際的な学問分野の構築を目指しています。

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