物性実験I

スピン構造物性

教員

教授/藤田 全基
准教授/南部 雄亮
助教/池田 陽一 助教/谷口 貴紀 特任助教/岡部博孝 特任助教/髙田秀佐

研究について

中性子実験施設(東海村)に設置された中性子散乱・回折装置群

スピン構造物性グループは2014年1月に立ち上がりました。固体物質中の電子の自由度(電荷、スピン、軌道)に着目し、量子ビーム(中性子、ミュオン、x線)を用いて物性の発現機構の解明を目指す研究を行っています。研究対象は高温超伝導から磁性体に至るまで幅広く固体物質全般を対象とし、単結晶試料の合成と量子ビーム実験を組み合わせたユニークな手法で機構解明を目指しています。研究用原子炉に三台の中性子散乱装置を管理・運営し、J-PARCにも高エネルギー加速器研究機構と共同で装置を設置しています。中性子散乱とミュオン緩和測定、さらには核磁気共鳴法という、磁性研究の強力な三つのプローブを専門とする教員が、共に存在する大学研究室としては日本唯一です。

研究テーマ
本研究室では、強相関電子系と呼ばれる物質群を主な研究対象としています。この系では、固体内の電子同士がお互いの存在を強く意識し合い、思いもよらない物性や機能を発現することがあります。複雑な人間関係にも似た、強相関電子系の魅惑的で多彩な現象の背後にある相関関係を解き明かし、発現機構の理解を通した新しい物理の創成を目指しています。たくさんの研究テーマがありますが、今年度は以下のテーマを中心に研究を進めていきます。

  • 超伝導発現機構(銅酸化物、鉄系、重い電子系)
  • 新奇量子臨界現象
  • スピントロニクス物質の磁気励起

量子ビームの複合利用による最先端研究
銅酸化物における高温超伝導の発現には、スピンと電荷の自由度が関係しています。超伝導機構の解明には、骨格となる静的構造、すなわち基本構造の決定だけでなく、スピンや格子などの動的構造(ダイナミクス)に関する知見を得ることが極めて重要です。本研究室では、構造とダイナミクスの研究ツールとして広い空間・時間スケールでの測定が可能な中性子散乱法を駆使し研究を展開しています。また、ミュオンや放射光X線などの量子ビームを使った実験も主体的に行っており、相互作用の決定、相関関係の解明に量子ビームを複合的に利用することも本研究室の特徴の一つです。これら量子ビーム実験は国内外の多数の大型施設を利用して行います。

自ら創る

FZ炉での結晶育成の様子と合成した単結晶試料

目に見えない相互作用、相関関係を調べるためには創意工夫が必要です。本研究室では、日本で数少ない中性子散乱の専門グループとして、中性子散乱の新しい手法開発にも取り組みます。測定を行うためには、良質の単結晶試料が欠かせません。このために単結晶の育成にも取り組んでおり、多種多様な機能物質の結晶化も試みています。誰も行ったことのない試料合成や装置の開発は、科学の発展を先導する新発見の原動力となります。また、大学院生という研究者の種も、世界中の研究者との共同研究の中で育まれて行きます。このために、院生生活を通して、物理的に物事を考える力を身につけ、研究の楽しさを味わえる環境をスタッフは最大限の努力で提供していきます。目的を同じくし、相互に関わりを持った個々の活動から、新しい”モノ”を創っていきます。

ページの先頭へ