■ | 日時: | 10月22日(月)16:00− 17:30 |
場所: | 理学部 総合研究棟 745号室(大学院講義室I) | |
講師: | 門脇 和男 (筑波大学教授) | |
題目: | 高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いたTHz電磁波の発振現 | |
要旨: |
高温超伝導体は2次元的に配列したCuO2面がc-軸方向に積層した構造を持ち、伝導に特徴
的な強い2次元的異方性がある。異方性の大きさは物質により異なるが、典型的な物質で
あるBi2Sr2CaCu2O8+δは大きな異方性を持ち(異方性パラメーター値γで約80〜1000)、
CuO2面間(〜1.5nm)はジョセフソン接合的な振る舞いをすることが知られている。このためこれらの系は
固有ジョセフソン接合と呼ばれるが、従来のジョセフソン接合と比較して接合の厚さが原
子層レベルであること、従って、極めて緻密なジョセフソン接合の積層構造が実現できる
ことや、また、単結晶が完全結晶であるかぎり、理想的なジョセフソン接合が得られると
考えられる事などが従来のジョセフソン接合では得られない大きな特徴である。また、強
い層状性に起因する大きな異方性によって、c-軸方向の超伝導プラズマエネルギー((h/2
π)ω_p〜0.2 meV)は超伝導ギャップエネ
ルギー(2Δ〜60 meV)より2桁以上小さくなり、マイクロ波によっていわゆるジョセフソ
ンプラズマ波の励起を直接観測することが出来る。このジョセフソンプラズマは3成分を
持ち、そのうち縦波は超伝導相転移に伴うゴールドストーンモードであり、これが実際ジ
ョセフソンプラズマ共鳴として直接観測できる事自体、大変興味ある現象である。
最近、このような固有ジョセフソン接合のメサ構造を作成し、c-軸方向に直流電流を加え
、準粒子状態を励起するとメサ構造の大きさに依存した強力なTHz電磁波が発生すること
を突き止めた。この現象は、超伝導体そのものが共振器として働くことによって各固有ジ
ョセフソン接合の位相が一体化し、コヒーレントになり、あたかも1つの巨大なジョセフ
ソン接合のように振る舞うものと理解される。これは、個々の固有接合が位相をそろえて
発振したジョセフソン接合レーザーであると考えることができる。このような理解に至っ
た経緯を、実験事実を基に説明したい。また、応用上の重要性についても言及したい。
なお、この研究成果はアメリカ合衆国Argonne National LaboratoryのWai Kwokグループ( Materials Science Division)との共同研究である。 | |
連絡: | 豊田 直樹 (795-6467) | |
☆ 15:45 よりコーヒー、紅茶、お菓子を用意します。カップを持ってお集まり下さい |