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反強磁性スカーミオン

金研理論物理グループ

微小なスピンテクスチャーは情報ビットとして役立つことが期待されているため、電流およびスピン流による運動の制御はスピントロニクスの分野で最重要課題の一つとして位置付けられている。強磁性スカーミオンは微小であり、電流誘起駆動の際にも磁壁に比べてピンニングされにくいことから近年注目を集めている。一方で強磁性スカーミオンには漏洩磁場や横運動が存在するなど、スピントロニクスデバイスへの応用に不都合な点もある。本研究では新しいトポロジカルなオブジェクトとして反強磁性スカーミオンの提案とその微小磁場シミュレーションを行った。このトポロジカルテクスチャーは漏洩磁場を有さず(図1参照)、また強磁性類似物よりも易動性に優れている。我々は、相対論的スピン軌道効果に起因しスピンスパイラル構造の起源である、ジャロシンスキー-守谷相互作用が反強磁性スカーミオンを安定化することを明らかにした。さらに、その直径や拡散係数などの熱力学性質も強磁性スカーミオンとは異なる。そのユニークなトポロジーゆえに反強磁性スカーミオンはマグナス力を感じず、電流に対して横方向へは運動しない(図2参照)。この性質はスピントロニクス応用への興味深い候補となる[1]。今後は反強磁性絶縁体におけるスカーミオン伝搬の温度勾配依存性の研究とスピン軌道トルクによる反強磁性スカーミオン駆動の理論の構築を行う。

[1] J. Barker and O. A. Tretiakov, ArXiv: 1505.06156 (2015).

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図1 図2
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