トピックス

バリオンの相対論的多体系としてのハイパー原子核

原子核理論グループ

多くの原子核では、陽子や中性子が共通のポテンシャルを感じながらその中で独立に運動している描像がよく成り立っています。これは平均場理論とよばれ、原子核の殻構造や魔法数の説明などに大きな成功を収めています。この方法では、角運動量などの保存則を自発的に破ることによって、原子核の変形に対する直感的な説明が与えられます。このような利点がある一方で、このアプローチでは原子核のスペクトルを直接計算できないという問題がありました。近年、コンピューター技術の発展に伴い、平均場近似で破れた対称性を回復しつつ平均場の量子ゆらぎも考慮して原子核のスペクトルを記述する「平均場を越えた」アプローチが急速に発展しています。我々はこの方法をハイパー原子核に適用し、相対論的バリオン多体論に基づいてハイパー原子核のスペクトルを記述することに初めて成功しました [1]。ハイパー原子核は、通常の原子核にストレンジネス(奇妙さ)の自由度を持つ粒子(ハイペロン)が付加されたもので、これまでに多くの理論的、実験的研究がなされています。我々の方法は比較的軽い領域から重い領域のハイパー核まで系統的に記述できるものであり、今後の発展が注目されています。

[1] H. Mei (本グループ D3)、K. Hagino (本グループ准教授)、J.M. Yao (元、本グループ助教)、T. Motoba (大阪電通大教授)、Phys. Rev. C91 (2015) 064305.

en_fig1 en_fig2
図1 : ハイパー核の模式図   図2 : 13ΛC ハイパー核 (12C + Λ)のスペクトル。
Jπ は各状態の角運動量 (J) とパリティ (π) を表す。
ページの先頭へ