物性実験I

ナノ固体物理

教員

教授/谷垣 勝己
准教授/下谷 秀和
助教/田邉 洋一 助教/平郡 諭

研究について

図1.物質の自己組織化を利用して形成されるグラファイトナノ構造とナノ折り紙。

 近年の物性物理の進展は、物質の極微細構造に踏み込んで物性と構造との関係を理解し、それを基礎として新しい素材を開拓する時代に突入している。この様な物性分野の進展は、これまで微細加工技術を基礎として進められてきた。現在では、電子線加工技術などにより数百Å程度のサイズの加工が可能である。さらに、トンネルスペクトロスコピーを利用すれば原子を1個ずつ制御する事が可能な時代でもある。しかし、原子を1個ずつ並べていたのでは、重要な物性が発現するような構造体を構築するためには、半永久的な時間が必要となる。

このような状況において、図1に示すナノ領域の構造(物質の有する対称性を利用した構造)は、自然の自己形成機能により形成される。このような、ナノ領域のサイズを有するクラスタを基本構成要素として創生することのできるナノネットワーク固体は、発現する物性を微小領域の構造に基づいて精密に制御する事のできる新しい物質系と言える。

 電気伝導はスピンと電荷をともなうフェルミ粒子である電子が運ぶ電荷の流れであり、磁性はそのスピンにより作りだされる磁気モーメントがスピン配列により物性として顕在化したものである。電子スピンが他の媒体を介して種々の形で相互作用する場合には、さらに興味深い物性が発現する。例えば、電子スピン間の距離が離れている場合でも、電子スピンは他の媒体の間接的な介在を経ることにより配列し磁性が発現する。また、クーロン反発力ではなく引力が電子間に働き、超伝導が発現する事も可能となる。直接相互作用に対して、このような相互作用は一般に間接的相互作用として知られていて、磁性ならびに超伝導発現のための重要な機構の一つでもある。

図2.種々のナノクラスタネットワーク固体とその有する階層構造に存在する種々の相互作用。
これらの相互作用から多様な物性が発現する。

 本研究グループでは、IV 族元素を中心とするクラスタを基本構成要素として新しいネットワーク固体を創製して、ナノ構造に基づいて発現する伝導および磁性を探究している。炭素(C)のような正5 角形と正6 角形ネットワークにより構成されるC60やナノチューブは、ファンデアワールス固体であるのに対して、5 角形だけから構成される(Si/Ge)20は共有結合固体である。クラスタ固体が特徴として有する、図2 に示すような階層的な構造を利用して、クラスタ固体に伝導に関与する原子や磁性に関与する原子を導入する事により、ナノ多面体クラスタネットワーク固体で特異な伝導や磁性を発現させることを考えている。そして、このような基礎的な理解にもとづき、次世代の新素材につながる研究を目指している。

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