物性実験I

強相関電子物理学

教員

客員教授/藤森 伸一 客員教授/池本 夕佳 委嘱教授/解良 聡

研究について

強相関電子物理学グループでは国内の最先端研究施設の優れた環境のもとで強相関電子物性の研究教育を行っている。各教員の研究テーマは以下のとおりである。

藤森伸一 客員教授(日本原子力研究開発機構)
関連URL:https://msrc.jaea.go.jp/index.html

強相関電子系の中でも、特に希土類・アクチノイド化合物は非通常型超伝導や複雑な磁性を示しており、基礎物性物理学において重要な研究対象となっている。本研究室では、世界トップクラスの性能を持つ大型放射光施設SPring-8の軟X線ビームラインBL23SU(左図)に設置した光電子分光装置(右図)やXMCD装置などを利用することにより、強相関希土類およびアクチノイド化合物に対する先端的な分光研究を行う。電子状態や磁性状態を明らかにすることによって、その物性発現機構をミクロな立場から解明することを目指す。

軟X線ビームラインSPring-8 BL23SU(左図)および光電子分光装置(右図)

池本夕佳 客員教授(高輝度光科学研究センター)
関連URL:http://www.spring8.or.jp/ja/

大型放射光施設SPring-8の赤外物性ビームラインBL43IRを利用して、赤外線領域の放射光を光源とした新たな分光装置の開発と強相関物質の分光測定を行い物性発現のメカニズムを解明する。放射光はX線から赤外線まで広いエネルギー領域の光をカバーする。物性物理はもとより、基礎科学から産業応用に至る多様な分野で利用され、今や物質科学研究に必要不可欠な光源である。SPring-8は世界最高の加速エネルギーを持つ放射光施設で、ここで得られる赤外線は, 高輝度・広帯域特性を持ち, 通常の赤外分光とは異なる条件で測定を行うことができる。下図にビームラインの写真を示す。磁場・圧力・温度・雰囲気などの環境を制御し、近赤外〜遠赤外の広帯域顕微分光測定が主力だが、特に近年は高磁場や湿度制御環境における顕微分光装置開発に力を入れている。また、赤外近接場分光装置開発も行っている。

SPring-8 BL43IR

解良聡 委嘱教授(分子科学研究所)
関連URL:https://groups.ims.ac.jp/organization/kera_g/

有機化合物の中には強相関電子系の特徴を示すものが多くある。分子を量子構造体とする局在電子系のなせる業である。しかし分子間の相互作用は緩く結合したvan der Waals力によって固体を形成するものが多く、その機能・物性を司る本質は、分子に局在化した電子と多彩な階層フォノン(集団的格子振動・局所的分子振動)が担っている。弱い相互作用の影響は狭いエネルギー領域で複数現象が競合する形で現れるため、計測実験自身の困難さに加え、本質的に外的環境因子で容易に変化する「観測しにくい」状態である。有機化合物を材料として応用展開しようとすると、しばしば固体物理学で培われてきた学理が適用できない状況に遭遇する。こうした電子とフォノンが協奏的にふるまう物質系の電子状態や振動状態を精密に計測することで、複雑な分子集合系の特徴を露わにし、「輸送する電荷・変換される電荷の姿」を量子論的に理解することを目的として研究を進めている。

UVSOR放射光施設:最先端の波数分解光電子顕微鏡が導入された
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